明けましておめでとうございます。令和4年の年頭にあたり一言ごあいさつ申し上げます。
令和3年を振り返りますと、まず一つ目に、新型コロナウイルス感染症拡大の長期化があげられます。外食や旅行等が低迷するなか、農家及び地域はその影響を受け続けた1年でした。その影響は大きく、品目によっては厳しい需給状況となり、特に米については、需給見通し上の生産量の実現に取り組んだにもかかわらず、過剰在庫が発生し、全国的に米価の下落を招く結果となりました。
また、世界の経済活動再開等に伴い燃油、肥料、飼料等の価格高騰も発生し、今なお生産現場では苦しい状況が続いております。今後も、新型コロナの影響を踏まえた対策の継続・強化や農業の現場に寄り添った農業施策の実現などについて県や国に対して改めて要請していきたいと考えております。
二つ目は、毎年のように悩まされる自然災害の発生です。昨年も8月の大雨や台風などにより、農作物への被害が多く発生しました。農業は天候・自然災害に大いに左右される産業であり、自然を相手にする農業の難しさを改めて痛感しております。災害対策については、行政の指導のもと、現状復旧に留まらず、改良復旧などにより災害に強い産地づくりを行っていく必要があります。
なお、水田農業については、6月中旬や7月上旬の日照不足や、8月中旬の大雨などから作柄について心配されましたが、令和3年産の作況指数は99で「平年並み」という結果でした。令和2年産の記録的な不作に続くことはなく、ほっと胸をなでおろしたところではありますが、先に述べた米価下落が本県においても顕著であり、米農家の生産意欲減退につながることが懸念されますので、更なる支援の必要性を感じております。
三つ目は、「大分県農業非常事態宣言」についてです。農業算出額や担い手の減少等で本県農業が危機的な状況にあるとして、昨年3月に県内農業関係者並びに県が一体となって当該宣言を発出しました。それ以降、新たに設置した大分県農業総合戦略会議の各作業部会において、園芸・畜産に係る構造改革、担い手の育成・確保、営農指導・流通販売対策等に係る課題解決のため議論を重ね、10月には「JAグループ大分による農業システム再生に向けた行動宣言」としてとりまとめを行いました。
JAグループ大分の宣言には、営農指導体制の強化、ねぎ・ピーマン・高糖度かんしょ・ベリーツの県域での振興及び出荷体制整備、耕畜連携体制整備、担い手の育成等が盛り込まれており、現状、行政・農業関係者が一体となって実践に取り組んでおります。
一方で、県内での嬉しいニュースもございました。
昨年5月に豊後高田の「豊後・米仕上牛販売拡大協議会」が、飼料米を活用して畜産物の高付加価値化に取り組んでいる畜産事業者として、日本養豚協会主催の第4回飼料用米活用畜産物ブランド日本一コンテストで次席の中央畜産会長賞を受けました。
また、畜産農家の経営安定や県産和牛のブランド向上につながるようなニュースもありました。大分県産の種雄牛「松吹雪(まつふぶき)」が霜降り度合いを示す脂肪交雑数値で大分県記録を更新、同じく大分県産の種雄牛「桜花久(さくらはなひさ)」が子牛の肉質を評価する検定で好成績をおさめるなど、優秀な種雄牛が県で育成されており、今後、産地の評価向上に繋がることが期待されます。
その他に、大分県産果樹の販路拡大に繋がるような嬉しいニュースもありました。大分県農協は中華圏を中心にアジア諸国で人気を集める果樹の輸出拡大を目指し、国の重点品目として支援を受けられるブドウと柑橘について、高値が期待できる現地の需要期に合わせた出荷態勢を整える試験などを始めました。輸送体制の整備・売込強化により海外でのブランド価値が上がり、出荷量の増加に繋がることを期待しております。
農産物貿易協定を巡る情勢も動きがありました。昨年2月にTPP協定への新規加盟を申請した英国の他、9月には中国と台湾が正式に申請しており、TPP加盟に関心を持つ国が相次いでいます。TPPへの新規加盟にあたっては、現加盟国による全会一致による承認が必要となるため、中国等がTPP協定の水準を満たす準備を整えられるかどうかが焦点となっています。私たちJAグループ大分は、当該諸外国が加盟することによる農業分野への懸念を払しょくするため、TPP協定への新規加盟国への扱いは、生産振興等に追加的な影響が生じないよう対応する旨、国に対して求めてまいります。あわせて、国内生産基盤の強化や海外需要を獲得するための国際競争力の強化に向け、農産物の輸出拡大や産地生産基盤パワーアップ事業等のTPP等関連政策大綱に基づく対策を継続的に講じるよう国に対する働きかけを行ってまいります。
また、JAグループ大分自らとしても、食料自給率がカロリーベースで37%と先進国で最低水準であることを十分認識するとともに、「食料・農業・農村基本計画」に掲げる、令和12年度を目標年度としてカロリーベースで45%とする食料自給率目標を念頭に、地域と一体となった地場農畜産物の消費拡大や需要喚起の取り組みを行ってまいります。また、国民が必要とし消費する食料はできるだけその国で生産するという「国消国産」という言葉をJAグループ独自のキーメッセージとして活用し、食と農の重要性を発信してまいります。
改正農協法の5年後見直しや准組合員の事業利用規制のあり方の扱いなどについては、結果として、「組合員と対話し、それに基づく方針を総会で決定して更なる自己改革実践サイクルの構築と実践に取り組んでいくこと」で結論が得られたと考えております。よって、「なくてはならない・必要とされるJA」という信頼と共感づくりのために、今後も不断の自己改革に取り組んでまいります。また、令和4年度は第31回JA大分県大会決議に基づく中期計画の初年度となります。県内農業者が希望をもって生産に取り組めるよう中期計画の実践に取り組んでまいります。
今年の干支は「壬寅(みずのえ・とら)※とらどし」であります。「壬寅」は、春の胎動が大きく花開くためには、地道な自分磨きを行い、実力を養う必要があるといったことを指し示しており、生命が誕生し伸びていくような年になりやすいとも言われております。JAグループ大分も、農業・農協を取り巻く課題に柔軟に対応しながら、「県農業の再生」に繋がる取り組みを地道に積上げることで、農業振興が伸び行く年にしたいと考えております。
最後になりますが、本年が大分県農業とJAグループ大分にとって、素晴らしい年となりますようご祈念申し上げ、年頭のあいさつといたします。